任意入院患者に対しての行動制限の考え方

原則的に言って、任意入院の患者には一切の行動制限ができません

「一切の」というのは、本当に一切であり、閉鎖病棟に入院させることも、隔離室を使用することも、通信の制限をすることも、面会の制限をすることも、金銭の使用制限をすることも、外出制限をすることも、本人の希望によるものでない限りは一切できません。

任意入院患者が閉鎖病棟に入院する条件

では、任意入院患者が閉鎖病棟に入ることはあり得ないのか?というと、そういうこともありません。これには2つの方法で可能であり、1つは患者本人の希望によるものであり、書面による同意があれば閉鎖病棟に入院しても良いことになっています。

もう1つは、指定医による診察の結果、閉鎖病棟に入院して外出を制限した方が良いという判断になった場合です。これは「任意入院における開放処遇の制限」と呼ばれるものであって、医師の判断と指示のもとになされるものですが、その指示がなされてから72時間以内に指定医による診察を受けさせ、本当に開放処遇を制限すべきかどうかの判断を行ってもらうことになります。(「精神保健および精神障害者福祉に関する法律第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」)

任意入院患者より退院の申し出があった場合

任意入院は患者の任意によるものですから、基本的に患者の意に反するような行動制限は一切できないのです。ですから、上述のように精神保健指定医の判断で開放処遇を制限することはできるのですが、それについても、もし患者が「それなら退院する」と言えばそれまでです。よっぽど病状が悪く医療保護入院に切り替えなくてはならないようなケースでないかぎり、患者の求めに応じて退院させなくてはなりません。それか、開放処遇の制限を止めるか、です。

任意入院患者は原則隔離拘束などの行動制限ができない

任意入院患者は、隔離拘束などの行動制限をすることもできません。隔離については、患者本人が隔離室に入室することを望んで書面による同意をした場合には例外的に入室することができますが、これは行動制限ではなく、患者本人が希望してという時に隔離室を使わせてあげることができるということです。

では、もし任意入院で入院している患者が、隔離や拘束を必要とするような不穏状態になったらどうするのでしょうか?

任意入院患者が隔離拘束を必要とする状態になったら

もし患者の病状が悪く医療保護入院の適応となるケースであれば、医療保護入院に切り替えた上で、必要な行動制限を行うべきです。しかし、もし病状が悪くなく、したがって医療保護入院の適応ではない病状で、患者が充分に分かった上で迷惑行為や他害行為をするのであれば(こういうことが問題になるのは、たいてい人格障害の患者ですが)、退院してもらうしかないでしょう。

これは一般病院で迷惑行為をする患者さんに退院してもらうのと同じ考え方です。(逆に、自分の行動が迷惑行為かどうかさえ分からないくらいに混乱している幻覚妄想の強い患者さんは、やはり本来的に任意入院にはすべきではありません。)

→任意入院患者の外出制限