精神科病院における通信や面会の制限についての考え方
医療保護入院で入院してくる患者さんの中には幻覚妄想や気分の障害が強く、明らかに社会的に不適切な行動に出てしまう方々が含まれます。例えば、躁病症状が強く乱買をする傾向があって、通信販売などでやたらと買い物をしてしまったり、幻覚妄想のために被害妄想を抱いている相手に手紙や電話をしてしまうこともあります。
あるいは家族や特定の人物と関係があまり良くないために、その相手と電話するたびに気分が落ち込むことを繰り返しているケースもあるでしょう。こういった場合のトラブルを防止するために患者の通信を制限したくなるのは、もっともな気もします。
しかし、それも一定のルールに則って行わなくてはならない決まりになっています。
手紙の制限はできない
まず、重要なのは手紙の制限はできない、ということです。これは患者から外部の人に対する発信も、外部の人から患者に対する受信も、ともに一切の制限ができないことになっています。例外的に、郵送されてきたものに異物(例えば刃物や薬物など有害・危険なもの)が入っている可能性がある荷物の場合は、職員立会いの下で開封し、場合によっては危険物を病院側が預かることはありえます。
しかし、それ以外の制限はできないのです。もし、どうしても家族からの手紙などが患者の気持ちを動揺させ、反治療的になると考えられる場合は、その事情を家族によく説明し協力を依頼するしか手がありません。
治療的に正当性がある場合 電話の制限はできる
次に、電話の制限ですが、これは手紙とは違い、一切できないということはありません。しかし禁止するのであれば、それは治療的な正当性のあるものでなくてはなりませんし、その理由をカルテに明記した上で患者にも保護者にも説明しなくてはなりません。いずれにしろ、電話の使用を制限するときでも、弁護士や「人権を擁護する行政機関の職員」への電話は制限することができません。
つまり、もし患者から「処遇の問題について県の行政担当に電話する!」という要求があったら、電話の制限がされていても、隔離されていても、基本的には電話をかけさせてあげなくてはなりません。
治療的に正当性がある場合 面会の制限はできる
面会の制限については、ほぼ電話についての考え方と同様であり、治療上必要だという正当性のある理由がある場合は、本人や家族に説明の上で制限することができます。しかし、本人が弁護士や「人権を擁護する行政職員」と面会することだけはとめることができません。
電話や手紙、面会などの制限についても具体的なガイドラインが「精神保健および精神障害者福祉に関する法律第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」に明記してあります。