令和6年4月1日 精神保健福祉法が改正されました。

改正内容は主に

  • 医療保護入院の期間の法定化と更新の手続き
  • 家族等の同意についての取り扱い
  • 措置入院時の入院必要性等に係る審査
  • 措置入院者・医療保護入院者への退院促進措置
  • 入院者訪問支援事業
  • 虐待防止の措置、都道府県等への通報の義務化

以上の内容が改正、制定されました

医療保護入院の期間の法定化と更新の手続き

今回の法改正にて、医療保護入院の入院期間が法定化されました。

具体的には「医療保護入院から六月を経過するまでの間は三月とし、六月を経過したあとは六月」とすることが定められました。

また、医療保護入院の更新の手続きが法定化されました。

具体的には指定医による①診察・判定②退院支援委員会の開催③家族等による同意 が更新の要件と定められました。

これに伴い、医療保護入院者の定期病状報告は廃止となりました。

家族等による更新の同意の取り扱いについても明確化されました。

家族等による更新同意については、入院期間満了日の一か月前から二週間前までの間に更新に係る通知を行い、同意書の提出を依頼することになります。原則として入院時または直前の更新時に同意を行った家族等に更新に係る通知を行うことになりますが、その家族等が不同意の意思表示をしたときや家族等でなくなったときなどは、それ以外の家族等に同意を求めることができます。

また、みなし同意という取り扱いについても明確化されています。

みなし同意とは、通知を発した日から二週間を経過して日までに家族等のいずれかの者からも更新について不同意の意思表示を受けなかった場合はみなし同意を行うことができるようになりました。

みなし同意は前回同意者以外の家族等に同意を依頼する場合や区市町村長同意の場合は対象外となります。

同意する家族等との連絡が定期的に行われていないときは、みなし同意を行うことができません。入院期間中に二回以上対面や電話などで双方向的な連絡が取れていることが、みなし同意を行うことができる条件となります。

家族等の同意についての取り扱い

家族等がない場合や行方不明の場合などに加え、家族等の全員が同意もしくは不同意の意思表示を行わない場合にも、市区町村長同意による医療保護入院が可能となりました。

家族等の全員が同意もしくは不同意の意思表示を行わない場合とは

  • 家族等が、同意または不同意の意思表示を行わないとの意思を明確に表示している場合
  • 家族等が、当該患者とのかかわりを拒否する意思を明確に示している場合

以上のような家族等がかかわりを拒否しているような場合を想定されています。

この規定により市区町村同意を行った場合、入院期間の更新をする際には、あらためて入院期間を更新することについて当該家族等の意向を確認する必要があります。

注意したいのは「入院に同意しない」という意向は「不同意の意思表示」であるため、この規定の対象にはならないということです。

措置入院時の入院必要性に係る審査

精神医療審査会において、従来の審査に加えて、措置入院の必要性に係る審査が必要となります。

都道府県が措置入院決定報告書及び二名の指定の診断書を審査会に提出します。緊急措置入院は審査の対象外です。

審査会が措置入院不適当と判断した場合は、措置入院の解除を行うことになります。

医療保護入院者・措置入院者への退院促進措置

措置入院者にも退院後生活環境相談員を選任することが義務化されました。施行日時点ですでに入院している措置入院者も対象となります。

入院者またはその家族等の求めに応じて地域援助事業者を紹介することが義務化されました。希望がない場合でも努力義務となっています。市町村は精神障害者や医療機関から紹介の問い合わせがあれば必要に応じてあっせんや調整を行うようになります。

退院後生活環境相談員になれる者に公認心理師が追加されました。

入院者訪問支援事業

区市町村長同意による医療保護入院者を中心に、本人の希望に応じて、傾聴や生活に関する相談、情報提供などを役割とした訪問支援員が派遣されるようになります。各都道府県が訪問支援員を選任し、研修等を実施していくようになります。

この事業の目的としては、精神科病院においては、本人の意思によらず入院が必要な場合があり、区市町村同意の医療保護入院者は家族等外部との面会交流が難しい場合が多いといった現状があります。

外部との面会交流が実質的に遮断されているこの状況は、本人の意思によらず入院を強制されている処遇であり、人権擁護の観点からも望ましくありません。

そのような背景から、患者本人の希望に応じ、生活一般の相談や本人の体験・気持ちの傾聴に加えて、必要な情報提供を行う訪問支援員を派遣することで、医療機関外の者との面会交流機会を確保することが狙いとなっています。

医療機関における虐待防止の措置の義務化

精神科病院の管理者は、院内の虐待防止のための意識向上のための措置、研修の実施や普及啓発、虐待に関する相談体制の整備を行うことが義務付けられました。

具体的には虐待防止措置として、虐待防止に関するマニュアルや規程の整備、人権や権利擁護に関する研修の実施、患者からの意見聴取、患者との接し方について話し合う場の設置等を行っていくことが必要とされています。

また、精神科病院における虐待通報の周知及び相談体制の整備として、虐待通報の周知や、院内の虐待相談窓口の設置、虐待相談があった際の対応について整備しておくことが義務付けられました。

虐待を発見した者から都道府県等への通報の義務化

病院内で業務従事者による障害者虐待を発見した場合は、速やかに都道府県に通報しなければならないと、定められました。

虐待を受けた精神障害者はその旨を都道府県に届け出ることができます。

業務従事者は、この通報をしたことを理由に、不利益な取り扱いを受けることはありません。

通報を受けて、都道府県が必要と判断した場合、実地監査において、指定は指定は虐待を受けたと思われる患者の診察を行うことがあります。

都道府県知事は、必要があると認める場合、病院の管理者に対して、報告や診療録などの提出を命じ、立ち入り検査を行うことができます。また、改善計画や必要な措置を命じることができます。

都道府県知事は、毎年度、業務従事者による障害者虐待の状況などについて公表を行います。

虐待の通報対象者は院内で虐待を発見した方であり、勤務しているすべての人、患者の家族、患者の知人、入院中の患者、虐待を受けた患者本人が通報対象者です。

虐待とは、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、経済的虐待、ネグレクトを指します。