このページではアルコール依存症から回復するために、重要なエッセンスを書いていきたいと思います。これらのエッセンスはしばしばアルコールの専門治療のなかで、アルコール依存症の本人やアルコール依存症のご家族に強調して伝えられている内容になります。

空白の時間をなくす

 回復初期のアルコール依存症にとって、空白の時間は大敵です。何もすることがない、暇な時間は、昔飲んでいたお酒のことを思い出しがちです。お酒のことを思い出すとお酒を飲みたくなってくるのが、アルコール依存症の面倒な特徴です。
そのため、アルコール依存症の回復初期では、空白の時間を無くすことが課題になってきます。
空白の時間をなくすための方法として、スケジュールをあらかじめ立てておくといった方法が推奨されています。あらかじめ一週間の予定を立てておき、そのスケジュール通りに生活をしていくのです。
 もちろんそのスケジュール通りに生活できる方が少ないのですが、細かくスケジュールを立てておくことで、極力空白の時間をなくすことができます。
 休息の時間や趣味の時間も、細かくスケジュールとして予定しておきます。スケジュールの変更や予定の追加はその都度行っていきます。規則正しい生活を送るための指標にもなるので、アルコール依存症の回復初期には非常に有用な方法と言えるでしょう。

 また、日記をつけることもオススメです。どんなタイミングでお酒を飲みたくなってしまったか、どんな状況でお酒を飲んでしまったか。どういったことをして、その際に飲酒欲求はどうだったか、メモでも構わないので、記録しておきます。
 自分はどういったものが再飲酒の引き金になるのか、どういった状況を避けるべきなのか、そういった記録をつけておくことで整理がしやすく、自己分析に役立てることができます。


 空白の時間を無くすようにスケジュールを立てておき、日記をつけてその日の状況を振り返ることができるようにしておく。アルコール依存症の回復初期はこういった工夫をしながら再飲酒を防いでいくことをオススメします。
あるアルコール依存症当事者の方は断酒の初期は色々なものが再飲酒の引き金になってたと話されます。そういった引き金を一つ一つ特定して分析することが非常に大切であったと実感しているそうです。
 また、その方は場合はボーッとしていると、ふと昔のことが思い出されるそうです。仕事終わりお酒を飲んでいた風景、自宅で酒をあおる自分の姿が自然と頭に浮かんでくるのです。不思議とそういった思いは、なかなか自然には消失しないのです。そのため、思い浮かべないことが一番の対処法になってくるのです。

再飲酒につながる引き金を特定する

 アルコール依存症の回復初期において、自分自身がどんなタイミングでお酒を飲みたくなるのかといった、再飲酒の引き金を特定しておくことが非常に重要になります。
 お酒を飲みたくなるタイミングは人それぞれ違うので、飲酒の引き金は人それぞれ違います
あるアルコール依存症当事者の方の場合は、よく仕事終わりにお酒を飲んでいたので、仕事が終わった後が非常に危険な時間となっていました。仕事終わりにふらふらと町を歩くことが一番危険で、ついつい居酒屋に入りたくなったり、コンビニに入ってお酒を買ってしまおうかといった欲望にかられてしまうそうです。
 また、ぼんやりとテレビを見ているとき、お酒のコマーシャルを見てしまうと、非常にお酒を飲みたくなってしまうそうです。そのため、どうしても観たいテレビは録画をしておいて、コマーシャルをカットするような編集をしてから番組を視聴するといった工夫をしていたそうです。
また前述した、何もしないでぼんやりとしているといった、空白の時間が非常に危険です。昔お酒を飲んでいた頃の思い出が頭の中をぐるぐると巡るのです。そうなるとなんとかしてお酒を飲みたい、という気持ちになってしまうので、空白の時間、ボーッとしている時間は絶対に避けなければいけません。
 そういった飲酒の引き金は皆それぞれ違うので、まず引き金を特定して、その引き金を避ける、対処法を考えておく、といった作業がとても大切になってきます。

 逆にお酒を飲みたくない状況、お酒を考えることができない状況を意図的に作ることで、引き金を避けていくことも有効です。
 ある当事者の方の場合は、集中して物事に取り組む際には飲酒欲求が全く無いので、何かに集中する時間を意図的に作るという対処法を考えられていました。

回復の際に、身体症状が出てくることがある

 アルコール依存症の回復の際に、しばしば身体症状が伴うことを理解しておくことの重要性も、回復プログラムでよく強調されることです。
具体的には気分が落ち込みやすくうつ的であったり、ちょっとしたことで怒りやすく、イライラしがちであったり、疲れやすかったり、夜なかなか眠ることができなかったり、そういった身体症状が現れることがあります。そういった身体症状があることを事前に理解しておくことが、再発の予防線になっているのです。
 断酒を始めてから1ヶ月から2ヶ月目くらいが再発の危険性が高いと言われています。この時期はお酒が体から抜けきって、体調の良さを実感できる時期でもあるのですが、この体調の良さに惑わされてしまうとすぐに再発してしまいます。
 体調の良さを感じるので、復職や就職に焦ってしまいがちです。しかし、体調の良さとは裏腹に、前述したような身体症状が現れるので、そういったことも再飲酒の原因になっていると言えるでしょう。

アルコール依存症の治療につながるタイミングについて

 アルコール依存症の方はなかなか医治療につながりません。アルコール依存症者の多くは否認が強く『まだ大丈夫』『好きで飲んでいるだけだ』『自分でコントロールできる』といった言い訳を繰り返してばかりで、自ら治療に繋がることは稀です。
『病院に行かなければダメだ』『お酒をやめなければダメだ』と自ら治療を希望する、治療への動機づけがアルコール依存症の治療には不可欠なのです。


 では、どういったタイミングで治療への動機づけを獲得できるのでしょうか。人によって動機づけのタイミングは様々ですが、動機づけのタイミングとして多いパターンは、本人が失敗した時、落ち込んでいる際に動機づけを行い、医療につながるパターンです。
 例えば職場でお酒を飲んでしまい、それが会社側にバレてしまった時や、それこそ飲酒運転をしてしまい警察に捕まってしまった時などが絶好のタイミングでしょう。


 もちろん飲酒運転をしてしまう前に動機づけができることが望ましいですが、飲酒運転をしてもなお動機づけにならない人もいます。そういったことを考えると、重大な失敗をしてしまうことで動機を獲得し、治療に繋がることができればその人とってはよかったと言えるでしょう。
職場でお酒を飲んでしまった場合は他に被害が出ていないのでまだいいのですが、飲酒運転で死亡事故を起こしてしまった場合が最悪です。近年飲酒運転での死亡事故が大きく報道されており、その都度法の改正が行われています。最近では白ナンバーの車を仕事で運転する場合もアルコールチェックが義務付けられるようになりました。飲酒運転の死亡事故だけは未然に防がなければなりません。
そのためにも動機づけを行い、アルコール依存症に治療を始めていかなければならないのです。

アルコール依存症者に対して、動機づけを意識した家族の対応

 アルコール依存症治療の動機づけは一筋縄ではいかないことが多く、家族は疲弊していることが多いと思います。
 また、アルコール依存症で困っている家族は、しばしばイネイブラーとなっていることがあります。イネイブラーとは、アルコール依存症の本人に対して悪影響を与える行動、イネイブリングをしてしまう存在のことです。
 家族はアルコール依存症の本人に対して、イネイブリングをしないよう、注意しながらて接していく必要があります。

アルコール依存症者の尻拭いをしないこと

 家族の行うイネイブリングには色々ありますが、一番注意をしなければいけないことは、本人の尻拭いをしてしまうことです。
 尻拭いにも色々あります。例えば本人が外で酔っ払ってしまい、何か失敗をしたとします。その際に本人を迎えに行ったり、本人のためにしてしまう全てのことが尻拭いに該当します。
 もしかしたら飲んでいたお店から連絡が来るかもしれませんし、警察に保護されて刑事さんから連絡が来るかもしれません。そういった迎えにかなければならないような状況であっても、迎えにいくことはイネイブリングになってしまうのです。心を鬼にして迎えに行かないこと、そういった厳しい優しさが家族の対応には求められます。
「申し訳ありませんが、本人にとってイネイブリングになってしまうので、迎えにいくことができません。酔いが覚めたら自分で帰るよう言ってください」といったように、自分の行動には自分で責任をとってもらうような対応がいいでしょう。

アルコール依存症者に対して正論を言わない、叱責しない

 本人に正論を言ったり叱責することもイネイブリングです。正論を言っても本人はやめることができません。本人もその正論は心の奥ではわかっていることでしょう。しかし、それでもなおやめることができないのが、アルコール依存症という病気なのです。わかっている同じ正論を何度も言われるとどうでしょう、誰でも「そんなのわかってるんだよ、何度も言うなよ」とイライラしてきませんか。正論や叱責は相手をイライラさせるだけで、お酒を止めるための糸口にはつながらないのです。むしろ関係性を悪くしてしまうとも言えるでしょう。正論を言ったり叱責することはこちらの負担を増やすだけで、何の意味もないのです。
 同じように、本人を脅すこともあまり意味がありません。例えば「離婚する」とか「家を出て行ってもらう」というキーワードを本人に伝えて脅すことです。何度もそういったことを言っていると、実際にはそういうことをしないだろうと、本人は学習してしまうので脅しにならないのです。そのため本当に実行する気のないことを引き合いに出す脅しには何の意味もありません。実際に離婚したり、家族が家を出て行ってしまうことは、それが本人の動機づけになる可能性が高いです。本人の動機づけのために、意図してなかなかできることではありませんが、そういった機会が動機づけになることがしばしばあります。

アルコール依存症者の行動を管理しても意味がない

 アルコール依存症者本人の行動を管理することもイネイブリングです。例えば本人に自由にお酒を飲まれるよりはと、1日何本と決めて本人にお酒を飲ませるようなことです。こういった制限や取り決めは、アルコール依存症者にとっては全くの無意味です。例えそういった制限や取り決めをしたとしても、アルコール依存症者はなんとかしてお酒を飲もうとします。隠してあるお酒を探し出したり、お酒を買いに行ったり、家族の目が届かないところで隠れてお酒を飲んだりします。
 24時間本人を監視できるわけではないので、家族の目が届かないところでお酒を飲んでしまうでしょう。


 お酒を買うことができないように本人にお金を持たせない、ということも意味がありません。家を隅々まで家探ししてお金を探し出したり、子どもの貯金箱からお金を拝借したりしてお金を入手します。最悪なのはお店でお酒を万引きして入手することです。お店の店員さんに見つかって捕まればいいのですが、非常に難しいのが、捕まらずに万引きを繰り返している時です。本人が万引きしたであろうお酒を飲んでいて、問い詰めたところ万引きをしたことを認めました。家族のみでお店に行ってしまいそうですが、謝罪時には必ず本人が同行するようにしてください。むしろ本人に責任を取ってもらうという考えからすると、本人のみで謝罪に行くことが望ましいですね。しかし、当の本人は謝罪に行くことを拒否するでしょう。家族のみで謝罪に行くことはイネイブリングになってしまうので、絶対にしないようにしましょう。
お金の管理や行動の管理、お酒の量の管理は家族の徒労で終わってしまうことがほとんどです。むしろ隠れ飲みや万引きの助長になってしまうのでやらない方がいいでしょう。

アルコール依存症の回復において焦りは大敵

 アルコール依存症にとって焦りは禁物です。お酒を飲んで死にそうだった状態から、体からお酒が抜けた状態になってしばらくすると、これまでが嘘だったかのような体調の良さを実感できます。そのような状態になると「もう大丈夫だ、早く働かなくては」という気持ちに駆り立てられます。

 しかし、仕事などの社会活動を再開するには慎重に判断していかなければなりません。体調の良さとは裏腹に、非常に不安定な状態なのです。お酒が体から抜けてしばらくは様々な身体症状が伴います。不眠傾向でなかなか眠ることが出来ず、疲れが溜まりやすかったり、以前に比べるとイライラしやすかったり、不安感が強く出てきたりと、これまでにない身体症状も出てきます。そうなってくると、以前行えていた仕事などの社会活動も難しくなってきます。以前と同じ社会活動が全く無理というわけではなく、時間をかけてゆっくりと、徐々に元の社会活動を目指していきます。


 この、徐々にゆっくりと、ということがなかなか難しく、焦ってしまいがちなのです。焦ってしまうと体調の良さを過信しすぎ、不眠や疲労感、イライラから飲酒欲求が発現し、すぐに再飲酒に繋がってしまいます。
お酒が体から抜けて、体調の良さを実感できても、焦らずにゆっくりと時間をかけて生活を戻していくことが重要なのです。

アルコール依存症における空腹、怒り、孤独、疲れは危険

空腹、怒り、孤独、疲れは、再飲酒につながりやすい危険な要因と言われています。そのため、再飲酒しないために、この4つの要因を徹底に避けること、対処していくことがアルコール依存症の回復には重要になってきます。

アルコール再飲酒につながる危険な要因 空腹

 お酒を飲むときは食べ物食べずにお酒を飲み続けていた人も多く、空腹になると自然と「お酒を飲みたいな」という気持ちになります。対処方法としては空腹感を感じないようにお腹を満たしておくことです。血糖値を上げておくことで飲酒欲求が低減されることが近年の研究では明らかになっています。
 できるだけ空腹でいることを避け、血糖値を上げておくことが再飲酒の予防につながります。簡単なお菓子類を常備しておくと安心です。チョコやクッキーなど、空腹を感じた際に間食して、飲酒欲求を凌ぐことが具体的な対処法になってきます。
1日3食規則正しく食事を摂ることも大切です。アルコール依存性の方は、食事を摂らずにお酒を飲み続けてきた方が多く、体に必要な栄養が不足しています。アルコールを分解するために、更に栄養が必要となってくるため、特に栄養が足りていない場合が多いです。アルコール依存症の方は特に食事には注意するようにしましょう。

アルコール再飲酒につながる危険な要因 怒り

 怒りもしばしば再飲酒の引き金になります。人によっては怒りを抑えるために、怒りの感情を和らげるために飲んでいたという人もいます。確かにお酒を飲むことでイライラした怒りの感情が和らぐかもしれません。しかし、怒りの感情が込み上げるたびにお酒を飲んでいたのではキリがありません。イライラしたり、怒りの感情が込み上げてきた時にはお酒を飲めばいいんだ、という条件付けができてしまいます。
怒りの感情が込み上げてきた際に、お酒以外の対処法を実践するといったアンガーマネジメントが具体的な対処法と言えるでしょう。
 自身の怒りの質を理解して、どのようにすればうまく対処できるか、自分の怒りについて理解しておきましょう。


 怒りの対処法としてよく挙げられるのが、怒りを感じたら深呼吸をして6秒待つ、といった対処法です。
怒りは長い時間持続しないため、6秒待つことで当初の怒りの量が半分以下に低減するといわれています。怒りに任せた行動に出ないように、怒りを感じた際には深呼吸をして時間が経過するのを待つことが簡単な対処法です。

アルコール再飲酒につながる危険な要因 孤独

 寂しさも飲酒の引き金になります。寂しさを紛らわせるためにお酒をたくさん飲んでしまうということはよくある話です。孤独を感じないような工夫ということは難しいことだと思いますが、家族がいる場合は家族を大切にしましょう。これまでお酒を飲んでいた自分を知ってもらい、受け入れてもらいましょう。


 家族がいない方はアルコール依存症の自助グループに繋がることをお勧めしています。AAや断酒会といった自助グループに通うことで、同じ悩みを持つ仲間と一緒に回復の道を歩むことができます。もちろん家族がいる方についても自助グループに繋がることをお勧めしています。
自助グループで行うこととしては、ミーティングで自身の体験を話したり、他の方の話を聞くといった分かち合いが主な目的となります。回復の目的を確認することでモチベーションを切らさず、お酒のない時間を共有するといったことが、アルコール依存症にとってはとても大切なことなのです。
一緒に回復する仲間がいる、一人じゃない、ということが孤独に打ち勝つ一つの方法なのです。

アルコール再飲酒につながる危険な要因 疲れ

 疲れもしばしば飲酒欲求を掻き立てる要素の一つです。これまでお酒を飲んでいた理由を話す時に、仕事終わりに習慣的に飲んでいた、という方が結構いらっしゃいます。お酒を飲むと疲れが取れ、癒される気がする。お酒を飲むと元気がでる、お酒を飲むとぐっすり眠れるようになる、と話される方が多いです。
お酒を飲むと一瞬だけ疲れを忘れることができるのかもしれませんが、疲れが取れたり、睡眠の質が上がるということはありません。
アルコールを分解するためにたくさんの栄養素を使い、肝臓を動かすので、普段よりも疲労回復の速度が遅くなります。また、睡眠の質も低下するためさらに疲労が取れにくくなります。
 お酒は疲れを取るためには逆効果のものですが、お酒を飲む人は口を揃えて疲れが取れるから、と言います。まずこの認識を改めなければいけないでしょう。
 疲れを取るために、お酒以外の方法を持ちましょう。また、疲れ過ぎないようにも注意しましょう。
 これまで習慣的に仕事終わりにお酒を飲んでいた方だと、この傾向に当てはまるようです。

スケジュールを立てて生活する

 前述したようにアルコール依存症の回復初期において、空白の時間は大敵です。何もすることがない時間は、しばしば落ち着いている飲酒欲求を掻き立てます。自宅でぼーっとしている時間がとても危険なのです。ぼーっとしていると、多くのアルコール依存症者は、お酒を飲んでいた時のことが昨日のことのように思い出されます。それが引き金となって再飲酒してしまう方もかなりいらっしゃいます。


 そのため、このぼーっとした時間、空白の時間を徹底的に無くしていくことがアルコール依存症からの回復には必要なのです。
アルコール依存症の回復プログラムのなかでは、この空白の時間をなくすために、日々のスケジュールを計画しておくことを勧めています。
日々のスケジュールでは、朝起きる時間から食事の時間、日中の予定、休息、余暇の時間まで、できるだけ細かく予定を書いていきます。できるだけ細かく詳細に、何もしていない時間がないようにスケジュールを作っていきます。


 スケジュールの作成は毎週行っていきます。そしてスケジュールが予定通りに消化できたかどうか、毎週振り返りをしていきます。組み立てた予定通りにいったか、飲酒欲求を感じる危ない状況があったかどうか、気づいたことを書き出していき、気づいたことを書いていきます。そして、その振り返りを活かして次の予定を組み立てていきます。

アルコール依存症にとってのノンアルコール飲料

 アルコール依存症にとってのノンアルコール飲料は賛否両論あり、うまく付き合っていくことが必要です。
 ノンアルコール飲料はもちろんアルコールが入っていない飲み物なのですが、近年のノンアルコール飲料の進化はめざましく、本物のお酒に非常によく似た味や飲み心地のするものが増えています。


 そのため、ノンアルコール飲料を飲むことで、飲酒欲求が掻き立てられてしまうケースがしばしばあります。ノンアルコール飲料だけで満足できればいいのですが、物足りなさを感じてしまい、本物のお酒に手が伸びてしまうというケースです。
 ノンアルコール飲料はアルコールこそ入っていませんが立派なお酒なのです。そのため、本物のお酒を飲まないようにするための対処方法として、上手く使うことができればいいのですが、再飲酒の引き金になってしまう可能性が非常に高いのです。
 ノンアルコール飲料はあくまでもお酒という認識を忘れないようにしましょう。
 個人的な意見にはなりますが、お酒を飲まないための対処法としてはノンアルコール飲料に頼らない方が賢明だと思います。

アルコール依存症者は本音を言えない

 アルコール依存症者のほとんどは、家族との関係が悪く、家族に本音を言えていません。正直に、本当のことを言うことができれば、もう少しすんなりと治療に繋がることができるのですが、正直に本当のことを言うことは非常に大変なことなのです。
 男性の家族があるアルコール依存症者は、まずプライドが邪魔をして、本当のことを言えません。これまで一家を支えてきた、大黒柱であるとうプライドがあります。素直にお酒をやめたい、と言えない立場があります。そのため、やめたいのにも関わらず好きで飲んでいるんだとか、好きな酒で死ねたら本能だ、といった強がりを言ってしまうのです。


 そういった本人の感じの悪い対応に、家族も反発してしまうことは自然な流れです。
 本人のそういった強がりの言葉に対して、つい売り言葉に買い言葉で、喧嘩のような状態になってしまいます。そのような辛い状態に陥ると、本人は更にお酒の飲む量が増えて悪循環になってしまいます。
 お酒を飲んでしまうと、一切の歯止めが効かなくなってしまい、何をいっても無駄、何をやっても無駄、という状況になります。
そうなると、本人を変えるために、まず家族が変わる必要があるのです。

 前にもお伝えしたように、アルコール依存症者の家族はアルコール依存症である本人に対して、アルコール飲めるような状況にしてしまっている行動をしています。そういった行動をイネイブリングと言い、イネイブリングを行ってしまっている人をイネイブラーと言います。アルコール依存症者の家族はイネイブラーであることがほとんどです。
 アルコール依存症者の家族はイネイブリングを意識的に改善して、イネイブラーから抜け出す必要があるのです。
 家族がイネイブリングをやめた時に、アルコール依存症の本人は、家族に本音を言えるようになるのです。
 ずばりアルコール依存症者の治療への第一歩目は、家族がイネイブリングを止めることであると言えるのではないでしょうか。

お酒をやめ続けながら働くこと

 これまでお酒を飲み続けていた人がお酒をやめて、再度働き始める、ということは、とても大変なことです。
お酒をやめてしばらく経つと、身体からお酒が抜けて体調の良さを感じることができます。その体調に良さから、すぐにでも働けると思いがちです。しかし、実際には以前の体の状態は大きく異なっていており、ちょっとしたことが再飲酒のきっかけになってしまうような、危ない状態なのです。
 そのような危ない状態であることを、当の本人は気づくことができません。
 人によっては体調の良さから復職を焦ってしまい、再飲酒をしてはお酒を抜いて、また復職して、を繰り返す人もいます。ずっと繰り返す人もいれば、焦らないことが大切であるとどこかのタイミングで気づく人もいます。その大切なことに気づけるかどうかは人それぞれなのですが、復職は焦らないということがとても大切なことなのです。

アルコール依存症にとっての再発と再飲酒について

 アルコール依存症の回復過程において、アルコール依存症の再発とアルコールの再飲酒は別々のものとして考えます。イメージとしては同じようなものなので、同じ意味で使っている場合も多いのですが、回復の過程では分けて考えていきます。
 アルコールの再飲酒は、その名の通りで、まさにお酒を飲んでしまった時のことをさします。ではアルコール依存症の再発とはどういった状況を言うのでしょうか。
 アルコール依存症の再発とは、アルコール依存症の際にあった、悪い考えや悪い行動が出てきてしまった時に、再発したと考えます。例えばお酒を飲むために嘘をついたり、お酒を飲むために盗みを働いたり、お酒を飲むために仕事を休んだりといった、そういった飲酒につながりそうな行動が現れた際に、アルコール依存症が再発したと考えます。
 アルコール依存症が再発した際には、かなりの確率で再飲酒につながってしまうので、アルコール依存症の再発のサインが現れた際には、再飲酒に至らないように注意しなければいけません。
 対処法を実践するなどして、再飲酒をしないようにしましょう。