精神保健福祉法が改正予定 改正のポイント
2020年10月14日に障害者総合支援法等改正案が閣議決定され、厚生労働省に関係資料が公開されました。
精神保健福祉法の改正点としては、第1条の目的に『障害者基本法の基本的な理念ににっとり、精神障害者の権利擁護を図ること』が加わりました。
第5条では精神障害者の定義から、精神病質が削除され、精神保健福祉法での「家族等」の範囲と除外される人が記載されています。
また、DV加害者や医療保護入院等意思表示を求めることが適切でないと厚生労働省で定めた人という、新たな除外区分が記載されています。
措置入院対象者や立ち会いをした者等には、措置になった理由も書面告知をするようになります。
措置入院においても、退院後生活環境相談員の選任が義務付けられ、地域援助をする事業者の紹介も義務となります。
措置入院の必要性についても、精神医療審査会での審査対象となります。
医療保護入院は厚生労働省の定める期間の期限がつくようになり、更新の際には手続きが必要になります。
これまでの医療保護入院者に対する定期病状報告に代えて、医療保護入院の更新の届出が創設されます。
入院期間の更新について、精神科病院の管理者は、家族等に必要な事項を通知し、一定期間後も意思表示を受けなかったときは、同意を得たものとみなすことができます。
市区町村同意の対象に、家族等が意思表示をしない場合も含まれるようになります。
入院時に本人、同意した家族に入院の理由を書面で告知することが必要になります。
入院者訪問支援事業
区市町村長同意による医療保護入院者を対象に、外部との面会交流の機会を確保し、その権利擁護を図ることが必要です。
そのため、都道府県知事等が行う研修を修了した入院者訪問支援員が、患者の希望により、精神科病院を訪問し、本人の話を丁寧に聞くと共に、必要な情報提供等を行う「入院者訪問支援事業」が創設されます。
精神保健福祉法の改正について 現職者としての感想
医療保護入院の同意者については、これまでも変更が重ねられています。現行の医療保護入院の同意者の問題に焦点を当てた変更点と言えるでしょう。
現行の医療保護入院でも、同意者となる家族がDVの加害者であったり、虐待を行っていたり、というケースが現場レベルでかなりありました。入院の際に医療保護入院の同意者として相応しくないだろうと判断した際には、その都度精神医療審査会に確認を行い、対応をケースごとに確認していました。
法律の中に同意者から除外するという文言が追加されたことで、スムーズに入院手続きを取ることができるように思います。
また、市区町村同意の際に、家族等が意思表示を示すことができない、示さない場合に市区町村同意の対象となると明記されたことも、入院を必要としている方を入院治療に繋げやすくする変更点であると思います。
市区町村同意の判断は市区町村それぞれが判断していくため、市区町村によってスピード感が違います。市区町村同意を出さないところはなかなか許可を出そうとしません。
速やかに入院が必要な状況にも関わらず、家族等の住所を把握しているのであれば、手紙等で所在や入院の意思表示を確認するようにと指示されます。
そう言った場合は応急入院の72時間以内に所在を確認するように、といった流れになるのですが、手紙等での確認するにはギリギリの期間だと思います。
住所不定で郵送したものが戻って来れば家族等の所在不明として市地区町村同意として扱ってもらえるのですが、受け取って返事がない場合については市区町村同意として扱ってもらえません。そういったケースで医療保護入院が必要である状況にもかかわらず、入院することができない、といった状況がありました。
法律の改正により、そのようなケースについては市区町村同意により医療保護入院は可能になる点について大きな変更点であると考えます。
一方的医療保護入院の継続について、手続きが現在よりも増えることになります。
現在も医療保護入院の場合、想定された入院期間を超えそうな場合は、退院支援員会を開催して、定期病状報告を提出していくことが義務付けられていました。
今回の法改正で、定期病状報告は廃止になりますが、医療保護入院の更新の手続きが創設される予定です。具体的にどのような手続きが必要になるかはこれから明らかになっていきますが、おそらくは医療保護入院の入院時と同じような手続きが必要になってくるでしょう。
医療保護入院の同意者に退院支援員会などで医療保護入院の継続について確認し、医療保護入院更新の同意を得る、そしてそれを書面にして告知する、といったような手続きになってくるのではないでしょうか。
そうなると、今までは入院の同意だけを家族等にとっていた状況から一変し、医療保護入院の継続についても家族等の同意が必要、ということになります。同意の意思を示さない場合も同意をしたものとする、といった取り扱い方があることが唯一の救いでしょうか。法改正が家族等の繋がりを維持するきっかけになることは確かですが、以前にも増して業務が増えることは避けられないでしょう。
地域支援者を紹介することを義務付けるということも大きな変更点です。どのような形で紹介するかによって、病院側の業務量が変わってきます。
直接地域事業所に繋ぐ方法だと、時間がいくらあっても足りないので、地域の支援事業所をまとめたような冊子を渡すようなかたちでの情報提供が現実的でしょうか。しかし、冊子を渡された本人が地域事業所に連絡を取った時に、的確に相談することが可能でしょうか。結局病院が間に入って調整するケースが多くなるのではないかと思います。
個人的には、今回の法改正で、病院の業務量がかなり増えるのではないかと懸念しております。