無理やり精神科病院に連れて行って受診させることについて

Q:患者の病状が悪く家族は何とか病院に連れて行きたいが、本人が強く拒否して連れて行けない場合、何か良い方法はありますか?病院から職員を要請して連れて行ってもらうことはできませんか?

A:患者本人に病識が全くなく精神科の受診を強く拒否することはまれならずあります。家族の方々はたいてい大変困っていますが、何とか家族や親族で協力して病院に連れてくるしか手はありません。
以前は精神病院などが職員を派遣し、家族からの依頼のみで患者の同意なく患者を無理やり病院に運んでいった時代がありました。しかし、このやり方は人権保護の観点からは大きく問題があるために、現在は禁止されています。

そのかわり、精神保健福祉法34条で、行政が医療保護入院に相当する患者を応急指定の病院にまで移送することをさだめています。しかし、現実的には、現時点ではほとんどどの都道府県でも、この「移送制度」をしっかりと実行しているところはない様子であって、大きな問題があります。このために、結局は民間救急会社に家族が要請をして患者を無理やり移送するということが行われている現状です。この移送の問題は行政の責任ですから、行政には今後しっかりとやってもらわなくてはならないでしょう。

まとめ

患者の人権を尊重しつつ、適切な医療を提供することは精神科医療の重要な課題です。強制的な入院は、そのバランスを保つ上で難しい点が多いことも事実です。

患者が受診を拒否している場合でも、患者の身体や精神の安全が明らかに危険であると医師が判断した場合、精神保健福祉法の規定に基づく移送と入院が可能です。

しかし、これには一定の手続きが必要で、慎重に手続きが行われている実情があります。

それ以外の場合、家族が患者と対話を続け、患者自身が病気を理解し、治療を受けることに同意するまでの時間と忍耐が必要です。そのため、心理的支援やカウンセリング、病状に関する情報提供など、家族が使えるフォーマルな社会資源の利用、主には保健所や精神保健福祉センターへの相談、協力を要請していくことが求められるでしょう。

→入院形態別の注意事項と行動制限