医療保護入院における行動制限についての考え方

医療保護入院の患者は、その病状によって何らかの行動制限を受けることが多いので、ここでは患者の受ける行動制限・生活制限の1つ1つについて、少し詳しく見ていくことにします。どんな制限を、どのような基準でして良いのか、いけないのか、については比較的具体的に法律に明記してありますので、それをよく理解したうえで使っていかなくてはならないからです。

医療保護入院における隔離拘束の考え方

A.隔離・拘束
医療保護入院で入院してくる患者には、自分自身を傷つけようとしたり、他人の害や迷惑になったりすることを、病状のためにしてしまう患者が含まれるため、任意入院の場合とは違い、必要性のある場合は患者の意思に反して患者の行動を制限することができます。

しかし、そこには比較的明確な基準があります。「精神保健および精神障害者福祉に関する法律第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」には、その内容が明記してあり、隔離を行うべき病状は以下の5つのものがあげられています:

ア 他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合。
イ 自殺または自傷行為が切迫している場合。
ウ 他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為が認められ、他の方法ではこれを防ぎきれない場合。
エ 急性精神運動興奮等のため、不隠、他動、爆発性などが目立ち、一般の精神病室では医療または保護を図ることが著しく困難な場合。
オ 身体合併症を有する患者について、検査および処置等のため、隔離が必要な場合。

もっとも多いのは自傷行為や他患への迷惑・暴力行為でしょうから、これらは(ア)、(イ)や(ウ)に該当します。また入院後すぐの状態で不隠が著しい場合は(エ)の場合に該当するのです。(オ)は、例えば明日内視鏡の検査や手術があるために禁食にしなくてはいけないのに患者本人だけでは理解が悪く守れない場合に隔離を使用するという場合などが該当します。
あたりまえの話ですが、隔離は何か悪いことをしたための懲罰として使用してはいけないことになっていますから、上記の5項目のどれに該当するわけでもないのに、何かの約束を破ったからとか、言うことを聞かないからとか、そういう懲罰的な理由で使用することは許されていません。

いずれにしろ、どんな理由で隔離を使用する場合でも、その理由をカルテに明記し、いつから隔離を始めたのか、その際に告知を行ったか、いつ解除にしたのか、等をしっかりと記載しなくてはなりませんし、基本的に書面による告知を行うべきです。

→医療保護入院の行動制限2